ヨーハン・ハインリッヒ・ペスタロッチは何十年にもわたり、教育学の創始者、すべての人を対象とする普通教育の吹聴者とみなされてきた。彼の生誕250年 に当たる1996年に、ペスタロッチ《神話》及びペスタロッチ思想の受容が、ある批判的研究討議の中心に据えられた。その後、歴史的ペスタロッチは、近代 への転換期に見事な自己描写を通してやっと自己の思想が受容されるための基礎を築いた、どちらかといえば落ち目の思想家である、とみなされている。しか し、70年をかけて完成されたペスタロッチの著作と書簡の批判版全集は、根本的な部分と時代に即応した部分とを分離し、教育学思想の発達に対するペスタ ロッチの貢献を改めて判定するために、この著者の思想と概念との新たな対決をわれわれに迫っている。